「蛍光灯」について

 また、学校に来てしまっている。家にいてもなにもやる気が起きない。言い訳でしかないのだろうが、起きた後のフワフワした感じをずっと引きずったままこの文章を書いている。偶然会った友達の話によると同じ学科の後輩が最近、積極的に展覧会や作品制作をやっているらしい。その人たちも来年にはもう卒業している。時間の流れは、思っていたよりも早かったようだ。

 肌がすぐに荒れてしまう。昼夜逆転の生活を送っていたこともあるが、ちゃんと早寝早起きの習慣を身につけても全く消えてくれない。ニキビがあるストレスでまたニキビができる、といった悪循環がここ数年間で定期的にやってくるようになった。そろそろ許してほしい。

 

 私は昔から、あまり夕方が好きではない。でも「夕日が綺麗だから見て」と言われればもちろん見ようとするし「綺麗やな」と言ってみたりもするが、正直夕日特有の赤くて強い、温度のある光はなんだか不安になってしまう。

 日が沈んで夜がくることが怖いからだろうか。確かに、夜がくるとなんとなく落ち込んでしまうし、朝の自分からすれば見ていられないようなことを考えてしまったりする。しかし、昼よりも夜の方が静かでものを考えている時間は多く、70回に1回ぐらいの確率で我ながら面白いアイデアを思いつくタイミングがある。どちらがいいのか未だに分かっていないが、少なくともイメージではなく言葉という媒体でなにか残しておくには、夜はあまりにも暴走しすぎているような気がする。夜にものを書いても、ろくなことがないと自分でも思う。

 夜の蛍光灯が放つ水銀の光や、LEDによる半導体の光が好きだということを言ってしまうといささか俗っぽく聞こえるかもしれないが、日光が雲に隠れてしまったり沈んでしまったりするのに対して、それら人工的な光は私たちが「光を浴びたいときに浴びる」ことを可能にしてくれるものだと思うし、そういう意味で自分も人工的な光が好きなのだと思う。24時間365日で昼も夜も営業している店舗に半ば依存状態である現代の人々にとって、途切れることなく照らされているコンビニやコインランドリーの光は、もはや欠かせない視覚的享楽の一つとして確立されてしまっているのかもしれない。

 しかし、それは私たち人間が科学によって自然の秩序から距離を置いたことによる「甘え」だとも捉えられる。実際、経済活動が活発な地域では蛍光灯の水銀による過剰な光が近隣住民の日常生活に悪影響を及ぼすとして、環境省は1998年に「光害対策ガイドライン」を定めているらしい。これは人間が自然の脅威や規則的な秩序を拒否し、我々も自然のごく一部であるという現実から逃げ続けた一つの結果でもあるし、技術の発展によって見えてきた「人間にとって無理がある部分」なんだろうと思う(実際、太陽光はセロトニンも含まれているし蛍光灯の10倍ほどの照度を持っている。いいことしかない)。

 この前見たある写真作品にも、3.11による東北の津波被害を防ぐために作られた巨大な「壁」のようにしか見えない防潮堤を撮影することを通して、そのような人間が行ってきた自然に対する「拒否」の形が強く見られていた。トークショーで彼らが話していたことの中で最も印象に残ったのは、それが人間に対して行う「権力の誇示」の一手段としても取られていることが多く、ひとえに自然から身を遠ざける目的として作られたものではないということであった。

 それは身の回りにもある「人工的な光」にも言えることではないだろうか。 夜、まばゆい人工の光が集まっているコンビニやコインランドリーはほとんどがフランチャイズ経営のチェーン店であり、それは都会から地方の田舎まで経営の場を広げようとしている。それは資本主義社会における「権力の誇示」としても考えることができるかもしれない。もっと身近なもので言えば、道端にある街灯もそうである。それらは微弱でありながらも、れっきとした人間が自然に対して行っている「拒否」の形であり、交通インフラ整備による政府の「権力」として考えることができるのかもしれない。

 

 「人工知能が自我を持ち、突然人間に襲いかかってきて全面戦争になる」といったダンシモンズの小説みたいなことは今日の科学技術では考えにくくなっているように、支配する対象そのものが目の前に姿をあらわして直接我々に攻撃してくるようなことは今の現実世界ではまずないと思う。むしろ公共の利益や福祉につながるように、理にかなう形に姿を変えていくような気がする。実はもう身近なところに「大きな権力の小さな誇示」が無数に漂っているのかもしれない。

 

 少し大げさに書きすぎた。だがしかし、私たちの生活を便利にしてきたのが同じ人間であることは自明の事で、その上全員違う動きをしているから一瞬で世界が塗り変わってしまうようなことはあまり想像できないしそれぞれの人生をやっていくことで誰しも精一杯だと思うから、そんな簡単に世界征服はされないと思う。そんな遠い話より、ニュースでブラック企業が告発されたことだとか働き方改革の矛盾点とかの方に私自身も含めてみんな目がいってしまうと思う。

もしかしたら世界で一番見られてるのは、SNSから引っ張ってきたバズってるおもしろ動画の一部分なんかだったりして!